仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 背後から声をかけられ、誌史は「ひゃっ」と小さく跳ねた。


 「が、がんばるくらいしかできませんから」
 「その気持ちが嬉しいんだ」


 顔を洗ったせいか、修吾は前髪が濡れていた。


 「シャワーもどうぞと言いたいところですが、着替えがないですもんね」


 誌史のTシャツでは寸足らずだし、当然ながら男物の洋服の用意はない。


 「気にするな。帰ったら浴びるから」


 不意に頭をポンポンとされ、それに呼応して誌史の鼓動もポンポンと跳ねた。
 まもなく、湯気を立てる卵料理と彩りのいいサラダがテーブルに並ぶ。トーストの香ばしい匂いが部屋に広がった。


 「どうぞ。ほんとに簡単なものですけど……」


 少し恥ずかしそうに言うと、修吾はフォークを手に取り、ひと口味わった。
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