悪妻エリザベスは破滅回避のため冷徹公爵と契約を結ぶ~異常な溺愛はお断りです~
「な、何故か理由をうかがっても?」
「さっきも言っただろう。興味が湧いた」

 エリザベスにはクラウスの言葉が信じられなかった。
 わざと軽い口調で言い放ったクラウスからは、獲物を逃すまいとする執念のような雰囲気が漂っている。

「……そんな理由でご自身の人生を棒に振るおつもりですか? 私との結婚で人生が滅茶苦茶になるかもしれないのですよ?」

 エリザベスが忠告の意味を込めて念押ししても、クラウスは喉を鳴らして笑うだけだった。

「俺は教会の信者ではないからな」
「それは、我が家も違いますけど……!」
「君は安心して見ていればいい。我が家はそんなことで傾いたりしない」

(安心出来ないのよ! 私は貴方に殺されるんだからー!!)

 心の中で叫んでも、クラウスには届かない。彼は楽しそうにエリザベスを眺めていた。

「この二週間で君は随分と変わったな。君はずっとつまらなそうだった。何でも卒なくこなすが、すべてが義務感にまみれていた。俺との婚約もそうだ。それなのに随分と可愛げが出てきたものだ」
「人の人生と国の命運を左右するとなれば、焦るのは当然かと」
「そんな必死な顔もするのだな」

(いつも私から目を逸らしていたのに、見られていたなんて)

 目を細めて笑うクラウスは何も見透かしているようだったが、先ほどまでの恐ろしさはない。

「クラウス様も、今日で随分と印象が変わりました」
「そうか?」
「いつも私のことを睨んでいらしたのに、今日はよく笑っていらっしゃるでしょう?」
「睨んでいたわけではない」

 食い気味に否定される。
 その答えがエリザベスにとっては意外だった。

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