悪妻エリザベスは破滅回避のため冷徹公爵と契約を結ぶ~異常な溺愛はお断りです~
「えっと、つまりここは前世で読んだ小説の世界で、私は脇役な上に殺されるキャラクター……。駄目だ、何度考えても詰んでる」

 寝室で一人になったエリザベスは、ベッドの上でメモを開いていた。
 メモをぐしゃぐしゃとペンで塗りつぶし、ベッドに倒れこむ。

 エリザベス・ローレンス。クラウス・ハーヴェイの婚約者。今は十九歳。あと一年後にクラウスと結婚することになっている。

 物語の舞台はおそらく来年からスタートする。けれどエリザベスが頻繁に登場するのは、三年後だった。

(首を跳ねられるのも三年後、だったはず。主人公のマリアがクラウスとだいぶ親密になってからエリザベスの話がでるから……)

 主人公のマリア目線で語られる物語ではエリザベスは脇役で、ほとんど記述されていない。首を跳ねられる直前に吐露した台詞のいくつかが、クラウスの口から語られるだけ。
 忙しい夫と徐々にすれ違っていき、得られない愛を渇望するも、叶わない現実に絶望する。最後には毒に溺れ、かつて愛してた人に殺される。

 物語にとっては、冷酷なクラウスの考え方を改めさせる重要なエピソードだ。
 エリザベスの死によってクラウスは人の心を考えるようになるのだから。それがなければ主人公のマリアとは結ばれないだろう。

(でもそれじゃあエリザベスが、私が、報われなさすぎる)

 お茶会の途中で見た未来のシーン。あれは映像というより記憶のようだった。
 エリザベス自身に纏わりついた甘ったるい香りがまだ鼻に残っているようだ。

 寂しい。苦しい。なぜ私だけが……。だったら皆巻き込んでしまえ――。
 彼女の叫びが自分の内側で渦巻いている。

 エリザベスは首を振った。

(引っ張られちゃダメっ!)

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