悪妻エリザベスは破滅回避のため冷徹公爵と契約を結ぶ~異常な溺愛はお断りです~
「せっかく健康な身体で生まれ変われたのよ。まっとうな人生、諦めきれないわ……!」

 前世では二十代のときに病室で亡くなった。やりたいことも、やるべきことも、すべてを置き去りにしてしまったのだ。

 だからこそ生まれ変わったと気づいた時、いるかも分からない神に感謝をした。そして決心したのだ。絶対に楽しく長生きすると。
 ローレンス伯爵家の令嬢として生まれたからには、貴族の女性として、まっとうな人生を生き抜くのだと――。

 前世があるエリザベスにとって貴族社会は窮屈だったが、目立たず、誰にでも親切に接していれば陰口をたたかれることはなかった。

『勤勉淑女のエリザベス』

 通っている王立学園では勉学にのめり込んで主席を取ってしまったため、皆からそう呼ばれていた。
 けれども刺繍やダンスが得意ではなかったエリザベスは、『憧れの淑女』というよりは、皆から憐れみの目を向けられながら手助けされる立場に落ち着いていた。

(普通に、目立たず、それでいて楽しく生きられたら、それだけで幸せよ)

 そう思ってこの十九年間を生きてきたのだ。これからの人生だって、もちろんそのまま突き通したい。

「そうよ! まだ死んだわけじゃない。なんならクラウス様とは結婚もしていない。結婚しなければ殺されない。……婚約を解消すればいいんだわ!」

 思いつくや否や、エリザベスは再びメモにペンを走らせて『円満離縁計画』と記す。
 そして今ある情報を書き出していく。クラウスとエリザベスの今までの関係、物語の記憶から得られるわずかな情報、これまでエリザベスとして築いてきたクラウスとの関係性、ローレンス家の立ち位置……。思いつく限りを書き出し、そこからひたすら婚約解消の術を探り始めたのだった。


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