想いと共に花と散る
漂っていた空気感が変わり、三人の視線が確かに交わる。
それは、各々の無すべきことが一致した瞬間の訪れでもあった。
「明日、幹部だけで会議を開く。雪も同席しろ」
「えっ……」
「お前らに辻斬りの話を持ちかけた奴にも何かあるかもしれねぇからな」
沖田は土方に見回りの結果を報告する際に、恐らく小夜の名前は出していない。
彼女を巻き込むことを嫌った彼のことだから、そんなはずはないのだが。
もしも土方が言うように小夜がこの辻斬りの一件に関係しているとしたら。
「俺はそいつのことを知らねぇからどうにもできんが……。雪なら、できるだろ」
直接小夜と関係のある雪だけが、彼女を助けられる。土方はそう言いたいらしい。
「分かりました」
何もないことを祈るばかりだが、もしも彼女のみに危険があろうものならば次は自分が彼女を助ける。
初めての場所で戸惑っていた雪に手を差し伸べたのは、かつての壬生浪氏組と小夜という一人の少女だったのだから。
「決まりだな。事は明日になってからじゃねぇと動けない。今夜はちゃんと休めよ、総司、雪」
「はい。それじゃあ、俺は自室に戻りますね」
最後に沖田が向けた笑みからは微かな疲れはあれど、焦りや不安といった色は消えていた。
心做しか、部屋の前から去る彼の背中は生き生きとしていたようにも見える。それがいいことなのかどうかは、今は判断もつかないが。
「なあ、雪。一つ答えを聞くのを忘れてたんだが」
沖田を見送った土方が障子を閉じながらおずおずと口を開く。
「てめぇにとって俺達は何だ?」
「へっ……?」
「てめぇがそんなに思い悩む理由に、俺達は関係してんのか」
何を言い出したんだ、この人。
柄にもなく相手の腹の底を伺うような土方の姿勢が異様に見え、雪はぽかんと口を開けて固まる。
土方は始めの頃と同じ様に文机へと向かうと、片膝を立てて座り込んだ。
「……すぐには答えられねぇようなことか」
「えっ、いや……いきなりで、どうしたらいいのか………」
文机に向かう土方と、閉じられた障子とを交互に見やりながら雪はたじろぐ。
これまではすぐに答えられずとも問いの意味自体は理解できていた。しかし、今は答えられないどころか問いの意味すらも分からない。
火鉢の火が消えていることにすら気付かないまま、雪はこの息苦しい状況から逃げ出す方法を考え始めた。
「隠し事も、遠慮も、俺達の間にゃ必要のねぇことだってのに……頼ったって、誰も文句なんざ言わねぇよ」
背を向けた土方の言葉は、鬼の副長という肩書に似ても似つかない弱々しいものだった。
それは、各々の無すべきことが一致した瞬間の訪れでもあった。
「明日、幹部だけで会議を開く。雪も同席しろ」
「えっ……」
「お前らに辻斬りの話を持ちかけた奴にも何かあるかもしれねぇからな」
沖田は土方に見回りの結果を報告する際に、恐らく小夜の名前は出していない。
彼女を巻き込むことを嫌った彼のことだから、そんなはずはないのだが。
もしも土方が言うように小夜がこの辻斬りの一件に関係しているとしたら。
「俺はそいつのことを知らねぇからどうにもできんが……。雪なら、できるだろ」
直接小夜と関係のある雪だけが、彼女を助けられる。土方はそう言いたいらしい。
「分かりました」
何もないことを祈るばかりだが、もしも彼女のみに危険があろうものならば次は自分が彼女を助ける。
初めての場所で戸惑っていた雪に手を差し伸べたのは、かつての壬生浪氏組と小夜という一人の少女だったのだから。
「決まりだな。事は明日になってからじゃねぇと動けない。今夜はちゃんと休めよ、総司、雪」
「はい。それじゃあ、俺は自室に戻りますね」
最後に沖田が向けた笑みからは微かな疲れはあれど、焦りや不安といった色は消えていた。
心做しか、部屋の前から去る彼の背中は生き生きとしていたようにも見える。それがいいことなのかどうかは、今は判断もつかないが。
「なあ、雪。一つ答えを聞くのを忘れてたんだが」
沖田を見送った土方が障子を閉じながらおずおずと口を開く。
「てめぇにとって俺達は何だ?」
「へっ……?」
「てめぇがそんなに思い悩む理由に、俺達は関係してんのか」
何を言い出したんだ、この人。
柄にもなく相手の腹の底を伺うような土方の姿勢が異様に見え、雪はぽかんと口を開けて固まる。
土方は始めの頃と同じ様に文机へと向かうと、片膝を立てて座り込んだ。
「……すぐには答えられねぇようなことか」
「えっ、いや……いきなりで、どうしたらいいのか………」
文机に向かう土方と、閉じられた障子とを交互に見やりながら雪はたじろぐ。
これまではすぐに答えられずとも問いの意味自体は理解できていた。しかし、今は答えられないどころか問いの意味すらも分からない。
火鉢の火が消えていることにすら気付かないまま、雪はこの息苦しい状況から逃げ出す方法を考え始めた。
「隠し事も、遠慮も、俺達の間にゃ必要のねぇことだってのに……頼ったって、誰も文句なんざ言わねぇよ」
背を向けた土方の言葉は、鬼の副長という肩書に似ても似つかない弱々しいものだった。