つまずいた先、運命の人【マンガシナリオ】

8.心の友

○大学の食堂
唯を蔑んだ目で見る柚乃。
唯「柚乃ちゃん・・・」※思い詰めた顔
唯モノ『この子は原嶋柚乃(はらしまゆの)ちゃん。同じデザイン科だ。昨年末のデザインコンペで私の作品が最優秀賞に選ばれてから敵対視されている・・・』
柚乃「去年の年末のコンペはマグレで最優秀賞取れちゃったかもしれないけど調子に乗らないでよね。」
勝ち気で唯を追い詰める柚乃。
思い詰めた顔で何も言い返さない唯に痺れを切らし香織が唯を庇うように立つ。
香織「そういうあんたはどうなの?一回でも最優秀賞取ったことあるわけ?」
身長の高い香織が柚乃を見下ろす。美人の怒った顔は迫力がある。
柚乃「!?な、なによ・・・あんたこそどうなのよ!」
香織「ないわよ。だからって唯を妬んだりしない。本心から尊敬してるし唯のデザインが私は好きだから」
柚乃「そう、生ぬるい友情ごっこご馳走様。唯ちゃん、今回のコンペで分かったでしょ?あなたのデザインにはなんの価値もないよ?また取れるといいわね、最優秀賞」
最後に可愛らしい満面の笑みを見せて去っていった。
香織からぐつぐつ煮えたぎる音が聞こえる。
唯モノ『あ、噴火する・・・』
香織「・・・あんの〇〇アマ!!自分のこと棚に上げて偉そうに!!お前の本性SNSに晒してやるから!!」
唯「お、落ち着いて香織!」
今にも殴り込みに行きそうな香織を座ったまま全力で止める唯。
周りの生徒が何事かとザワザワし始める。
唯「一旦場所変えよう!」
捻挫で歩きにくいがこのままの香織をこの場に留めておくこともできず中庭へ誘導する。


○大学中庭のベンチ・昼
香織「唯はなんで黙ってるのっ言い返しなさいよ!あんなこと言われて悔しくないわけ!?」
怒りながらも私の足を気遣ってゆっくり歩いてくれた香織。中庭のベンチまで来て唯を座らせると今度は怒りの矛先が唯に向く。
唯は先ほどの柚乃の言葉を思い出す。
柚乃『やっぱり去年の最優秀賞はマグレだったんだね。』『あなたのデザインにはなんの価値もないよ?』
唯モノ『柚乃ちゃんはたまに、さっきのように私の作品に対して色々言ってくることがある。最初は聞き流すことが出来ていたが度重なる鋭い言葉たちに心が追いつかない・・・』
唯の思い詰めた表情に香織も一旦息を吐き冷静さを取り戻す。
香織「あんな女の言うこと気にしてるとか言わないわよね?」
唯「・・・・・・・」
黙る唯。
痺れを切らした香織は唯にデコピンする。
唯「いだっ!」
香織「いい加減にしなさい。去年のコンペで唯を最優秀賞に選んだ審査員に失礼よ。」
唯は何も言い返せずまた黙り込む。
香織は唯の両手を自分の両手で包み込む。
香織「唯がデザイン大好きで、寝ること忘れるくらい熱中して、誰よりも深く探求して作品に向き合って来たの、私は見てたよ。」※真剣な眼差し
唯の目に涙が浮かぶ。
香織「何度も言うけどマグレなんかじゃない。絶対。あの女と私の言うことどっち信じるの?」
涙で香織の顔が霞む。
唯モノ『心の黒く渦巻く部分に香織の優しさが染み込んでいく・・・』
唯「香織・・・ありがとう。」※泣き笑い
香織「あ〜あ!せっかく楽しく恋バナしてたのに興が削がれたわ。なんか甘い物でも食べない?」
唯「奢らせてください」
香織「苦しゅうない、表を上げよ」
唯・香織「ぷっ・・・あはははは!」
二人は顔を見合わせ吹き出す。
青い空に二人の笑い声が響いていた。


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