拝啓、愛しのパイロット様
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何事もなくフライトを終え、香港に到着し、ホテルにチェックインした由桔也はスーツケースを置くと、まずシャワーを浴びた。
念入りに髪を乾かし、ルームサービスで食事を済ませたあとで、鞄からあるものを取り出す。
(さて、なにを書こうか)
由桔也はテーブルの上に日本から出国する前にあらかじめ購入しておいた新品のレターセットを置いた。
長田の誘いを断ったのは、小町へ手紙を書くためだ。
手紙を書こうと思い立ったのは、かき氷店でご両親の話を聞いたあとだ。
どれだけ言葉を尽くして愛を伝えようと、ステイ先からこまめにメッセージを送ろうと、きっと小町の心には届かない。
なら、手紙ならどうだろう?
時代に逆行している気もするが、由桔也の字を気に入っている小町なら最後まで読んでくれるだろう。
(誰かに手紙を書くなんて何年振りだ?)
なにを書くかは、事前に決めていたわけではない。
窓から見える夜景を眺めながら、小町が手紙を読む姿をひたすら想像する。
胸の中に眠る温かな想いを、どうしたらあますところなく伝えられるだろう。
時間はいくらあっても足りない気がした。
(よし)
由桔也はひとつ頷いてからレターセットへボールペンを走らせた。
小町と一緒に買ったボールペンは手に馴染み、頭の中にある文字を鮮明に浮かび上がらせる。
翌日、一時間ほどかけて書いたエアメールを空港内にある郵便事業社へ預けると、由桔也は帰国を果たしたのだった。


