おもひで猫列車へようこそ〜後悔を抱えたあなたにサヨナラを〜
『お、いいね。星って言えばいつもの星野丘公園でも見れそうだな』

静真くんスマホで検索しながら隣の私に顔を寄せる。

『ほら見て』

『ほんとだね。行くのに坂道が大変だけど周りに遮蔽物ないもんね』

『じゃあここに決まり。夜ご飯は俺がバイト帰りにコンビニで買ってくとして、十九時半はどう?』

『大丈夫』

(やめて……、約束しちゃダメなの)

(だって約束したら──彼は……)

私は扉を両の拳でドンドンと強く叩く。

「静馬くん、お願いっ!! 約束しないでっ!」

いくら大きな声で叫んでも、いくら扉を叩いても二人は気づく気配はない。

彼らには私の声どころか、姿も見えていないみたいだ。

『約束な。十九時半に星野丘公園の桜の樹の下で』

『うん、楽しみ』

二人は私の知ってる“あの日”とおなじように約束をすると、顔を見合わせて幸せそうに笑っている。

「お願い……、もう、やめて……っ」

私の悲痛な声は届かない。そしてそのまま二人を駅のホームに残したまま、無情にも列車は発車する。

私は力なく扉の前で立ち尽くした。

「……そんな……」

「──桜」

後ろから聞こえてきた声に振り返ると、いつの間にかヒデさんが立っている。

「ヒデ、さん……」
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