おもひで猫列車へようこそ〜後悔を抱えたあなたにサヨナラを〜
「俺さ。あの日、予定通りバイト終わって自転車で公園に向かってたんだ。でも途中で……重そうに荷物両手に抱えてるおばあちゃんがいてさ。なんか死んだばあちゃんに似ててほおっておけなくて、一緒にアパートまで行ってから桜の待つ公園に向かったんだ……」

静馬くんの声はいつもより少し掠れていて、伏せた睫毛が涙で濡れているように見える。

「早く桜に会いたくてさ……いつもは使わない路地をスピード出して走ってて……車にぶつかりそうになって避けようとして……それで……そのまま……だから全部、俺のせいなんだ」

「静馬くんのせいじゃない……っ」

あの日のことを彼の口から聞き、私のせいではないと言われても私の後悔は変わらない。

私は駄々を捏ねている子供のように首を振ると、涙をこらえながら口を開く。


「私が……星なんて見たいって言わなかったら良かったの。記念日なんて一緒に過ごせなくても良かったのに……」

「……俺は桜と星見たかった。記念日も一緒に過ごしたかったんだ」

「でもそのせいで……静馬くんが死んじゃったの……ごめんね……っ、静馬くんに出会ってごめ、んなさい……」

私のせいで静馬くんは死んだ。
私なんかと出会わなければ、静馬くんの人生はきっと変わっていた。

「そんな悲しいこと言うなよ」

彼の両腕が伸びてきて私は抱き寄せられる。
< 27 / 31 >

この作品をシェア

pagetop