幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
いまだに海外を転々としている章くんに会う機会は年に一度くらいだけれど、会えた時には思い切り姪の心暖を甘やかしてくれるから、特別な存在になってしまったのかもしれない。
恋愛感情ではないにしろ、これはもしかしたら、洸にとってすごくいやーな答えなんじゃ……。
「……心暖。パパには内緒にしよっか。ヤキモチ焼いちゃうから」
「うん! わかった」
女ふたりでニコニコと笑い合っていると、ブランコの方から不服そうな洸がやってくる。
「なんでパパには教えてくれないんだ?」
「ふふっ。内緒。そろそろ行こっか、じぃじたちがケーキ用意して待ってるから」
心暖と手を繋いでふたりで先に歩き出すと、小走りで追いついてきた洸が、げんなりした顔で言う。
「その態度で察した。あれだ、俺のトラウマに配慮してくれてるんだろう」
「だって、また修行期間に入られたら困っちゃうから」
「パパ、しゅぎょーするの?」
「いや、もうしないよ。大好きなママと心暖とずっと一緒にいる」
洸はそう言って、心暖の空いている方の手を握る。
両親に挟まれた心暖は交互に私たちの顔を眺め、うれしそうに目を細めた。
心暖の後ろでは、私と洸を小さな頃から見守ってきた桜の木が、笑うように枝先の花を揺らしていた。
FIN


