御曹司の深い愛が双子ママの心を甘く溶かす

 そういえばまだお礼を伝えていない。

 言いそびれてしまったけれど助けてもらったことに変わりはないのだから、大人としてお礼を伝えるべきだ。


「さっきは助けてくださってありがとうございました」


 隣に座る三澄社長の方へ体を向けて、ぺこりと頭を下げた。再び顔を上げると私を見つめる涼し気な目元と目が合う。


「助けるに決まってるだろ。自分の会社で働く大切な社員が変な男に絡まれてるのを見てしまったんだから」

「えっ」


 思わず目が丸くなる。ためらいがちに声をかけた。


「私のこと知っているんですか?」

「うちの社員食堂の管理栄養士だろ。名前は関水有紗さん」

「は、はい」


 まさか三澄社長が私のことを知っているとは思わなかった。自分の会社の社員ならまだしも、私は食堂業務を委託された別の会社の社員なのに。


「もしかして三澄社長は社内のすべての人の顔と名前を覚えているんですか」


 総勢どのくらいいるのだろう。二百は超えているはずだ。

 社長ともなると全ての人を覚えられるのだろうか。

 そうだとしたら超人的な記憶力だと、目の前の三澄社長を宇宙人でも見るような目で見ていると彼が静かに首を横に振る。


「さすがに全員は無理がある。だが、一度関わった社員は覚えるようにしている」

「社員食堂で私が定食を手渡したときのことを覚えていらっしゃるんですか」

「もちろん」


 三澄社長は口角を少し上げて薄く微笑み頷いた。


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