御曹司の深い愛が双子ママの心を甘く溶かす
その分仕事はしっかりしなければと管理栄養士として入所者さんたち一人ひとりの健康状態に合わせた献立を考え、栄養面でサポートできればと思っている。
社員食堂で働いていたときよりも今の方が献立作成は難しい。高齢の方が多いので、それぞれに合わせた食事の形態や治療食を考慮して献立を作らなければならないからだ。
大変だがやりがいもあり、利用者さんたちから『おいしいよ』と言ってもらえることが励みになる。
私はやはり管理栄養士の仕事が好きだ。
「お疲れさまでした」
一日の仕事を終えたのは午後三時半。時短勤務をしているので早めに上がらせてもらっている。
職員用玄関を出てからふと見上げた空は灰色の雲に覆われていた。
雨が降らなければいいなと思いながら施設の外に出たところで「有紗」と男性の声で名前を呼ばれる。
ぴくっと体が跳ねた。振り返ると、スーツ姿の男性が腕を組んで立っている。
「洸星さん……」
どうしてここに?
コスモス畑で再会したのが四日前。
出張で東京からこの街に来ていたらしい彼とはもう会うことはないと思っていた。
いるはずのない人物に驚き、私はその場で固まる。
洸星さんは軽く寄りかかっていた門塀から背中を離すと、私の方に向かって歩いてきた。