御曹司の深い愛が双子ママの心を甘く溶かす

 情けないことにその事実を知ったのはつい最近だ。

 見合いを断ってから俺は東雲美貴を徹底的に避けていたが、祖父の付き合いで東雲電気の創立式典に参加しなければならず、そこで久しぶりに顔を合わせた。

 そのとき彼女がすべてを白状したのだ。

 そこまでしたのにどうして私と結婚してくれなかったのかと、アルコールに酔った彼女がポロッと口を滑らせた。

 その事実に俺はしばらく呆然とその場に立ち尽くし、次第に東雲美貴への怒りが湧いてきた。

 もちろんそれをぶつけることはしないが、もう二度と俺の前に現れるなときつく言い放った。


「東雲社長は私が対応します」


 そう言って社長室を出ていこうとする秘書に「待て」と声をかける。


「俺が対応する。東雲社長を通してくれ」

「わかりました」


 秘書は軽く頭を下げ、社長室を後にした。

 イスの背もたれに背を預け、天井を見上げながら軽く息を吐く。

 MISUMIホールディングスの経営は順調。主要企業であるMISUMI電気から出た新商品の売行きが好調で今年度はさらなる売上増加が見込める。

 会長である祖父からも「よくやっている」と評価をもらえたばかりだ。

 それなのになぜ俺は満たされないのだろう。

 有紗を失ってからぽっかりと空いた穴が塞がらない。


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