【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜

残酷な曖昧さ

午後の会議室。



チームの定例ミーティングが終わると、川上が一番に黒瀬の隣へ駆け寄った。



「黒瀬さん、あの資料の方向性、すごく参考になりました!やっぱり視点が全然違うんですね」


「ま、伊達に年食ってないからな」


「なにそれ〜、でもほんと、尊敬しちゃいます」



楽しそうに笑う川上の声が、耳に刺さる。


(また……)


少し離れた場所で、ノートPCを閉じながら有紀は、ふっと小さく息をついた。


黒瀬は、相変わらず誰にでも冷静でスマートで、会議でも的確にメンバーの意見を拾い、場をまとめていた。


その姿を見るたびに、有紀の胸の奥には、誇らしさと同時に、チクリと痛む感情が芽を出す。



(……かっこいいな)


そう思ってしまうのは止められない。




──けど、それを誰かと共有したくなんかない。


それなのに川上は、当たり前のように黒瀬に近づき、隣で笑っている。


(……どうして私、こんな、みっともない感情抱いてるんだろ)




ただの同僚。


それ以上でも、それ以下でもないはずなのに。


黒瀬が誰と話そうと、笑おうと、何も言えない関係なのに。


それでも、胸の奥に広がるこの黒い感情が、自分でも情けなくて──嫌になる。

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