【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
———そうして、ずっと想い続けていた彼女が、今は隣にいてくれる。
リビングのソファに並んで座って、
有紀は俺の腕の中。
気づけば、もう何十分もこうしていた。
指先に触れる、髪の感触。
どこか石鹸みたいな、清潔でやさしい匂いがすぐそばにある。
背中に回した手に伝わるぬくもりと、重なる呼吸と鼓動──
その全部が、いつのまにか“日常”になっていた。
だけど。
(……こんなの、どう考えても奇跡だろ)
最初に名前を呼んだ日。
夜のオフィスで、ひたむきに仕事に向き合ってた背中を見た日。
どれだけ時間が経っても、ふとした瞬間に思い出す。
あの頃の俺には、こんな未来、想像すらできなかった。
「ん……なんか、じっと見てる?」
不意に顔を上げて、有紀がこっちを見る。
すぐに目を逸らさずに、ちゃんと目を合わせるのも、慣れてきたつもりなのに。
今でもちょっとだけ、照れる。
「見てたら、悪い?」
「……ううん、嬉しい。けど、そんなに見つめられたら、顔熱くなる」
「じゃあ、もっと見る」
「ちょ、黒瀬くん、やめてってば……!」
笑いながら顔を背ける仕草さえ、全部愛しい。
俺の名前を呼ぶ声も、俺にだけ見せる笑顔も、
そっと体を預けてくるその温度も──今は全部、俺の恋人としてのもの。