恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
高峰颯真 side|見えてしまった“関係の証拠”
──昼休み明け。
会議前に必要な資料を取りに行くよう指示され、資料室に向かった。
ドアに手をかけた瞬間、中からかすかに声が聞こえた。
「……なんで、黒瀬くんはそんなに平然としてるの?」
佐伯──だった。
思わず足が止まる。
その声は、普段の彼女らしくないほど、熱を帯びていて。
震えるように、繊細で、どこか傷ついていた。
扉の隙間から覗いた先に見えたのは、棚の奥。
佐伯と黒瀬が向かい合って立っていた。
彼女は何かを抱えるようにファイルを抱きしめ、黒瀬はいつもの調子で、彼女を見つめていた。
「さあ? そう見えるだけじゃね。慣れてるんじゃなくて──見せないようにしてるだけ。お前と違って」
どこまでも軽い声音。
けれど、その言葉の奥には、なにか冷たいものが滲んでいた。
そして──
「でもさ、お前が俺を意識して焦ってんの見るの……悪くない」
ぞくり、と背中を撫でられるような不快感が走った。