【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
「朝ごはん、ありがとう。お皿、洗うの手伝わせて」


キッチンに立ち上がった黒瀬の背中を見ながら、有紀が言うと、彼はちらりと振り返った。


「んー、じゃあ……拭くのお願い」

「了解」


袖をくるくると腕まくりして、キッチンへ向かう。ふたり並んで立つと、自然と肩が触れそうになる距離。


「こうやって並んでると……なんか、新婚さんみたいだな」


「なっ……!」


「冗談だって」


「もー、そういうこと言うのやめてよ…!」


いつもの軽口に振り回されて、顔がぽっと熱くなる。


シンクの前で、黒瀬が軽快に水を切りながら食器を洗い、有紀がその横で丁寧に拭き上げていく。


黙っている時間が心地よくて、時折ふたりの視線がふと交わるたび、少しだけドキドキした。


「なに、めっちゃ真剣な顔して拭いてるじゃん」

「当たり前でしょ。水滴残ってたらいやだから」

「……ほんと、きっちりしてるな。有紀って」

「そういう黒瀬くんのほうがきっちりしててびっくりなんだけど。もっと適当なイメージだったのに。」

「んー? 」



差し出された皿に手が重なる。


その瞬間、有紀の手がびくりと跳ねた。


(……近っ)


「……顔、赤いけど?てか、昨日もっとすごいことしたのに、これくらいで照れんなよ」

「照れてないし!」


彼のニヤッとした笑みに、また頬が熱を増す。



こんな他愛ないやりとりも、どうしてか全部、心をざわつかせた。





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