【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
「……ねえ、佐伯」



低くて、震えるような声だった。




「……なんで、黒瀬なの?」

「……え?」



突然すぎるその言葉に、有紀は息を呑む。


彼の目が、俯いて、伏せられる。


「なんで、よりによって……アイツなの……」


ぽつりとこぼされた言葉。


彼の膝の上で握られた拳が、微かに震えているのが見えた。



(……そんなふうに、思ってたんだ)



しばらくの沈黙。


夜風の音だけが、静かに耳をかすめる。




そして——




「——俺、佐伯が、好き」



静かだけれど、確かな熱を帯びた告白だった。



いつも堂々としていて、頼れる存在だったはずの彼が、今はどこか縋るような声音で。



言葉のあと、高峰はゆっくりと腕を伸ばす。

ためらいがちに、でも途中で止まることなく、



そっと——有紀を、抱きしめた。




(……え、うそ……)




胸の中に引き寄せられた瞬間、彼の鼓動が直接伝わってくる。


熱くて、不安定で、それが今の彼の心そのもののようだった。



触れる部分から、彼の熱がじんわりと身体の奥に浸透していく。



「好きだ。」


「ーーー」


「……俺じゃ、駄目……?」



耳元で、低く、懇願するように囁かれる。



「……絶対、大事にするから……」




震えるように抱きしめてくる腕。


強く引き寄せたいはずなのに、どこか壊れそうな優しさを含んでいて、


その“力の加減”に、彼の本気がにじみ出ていた。



「……高峰、くん……」



ようやく名前を呼んだとき、有紀の声もまたかすれていた。



胸の奥がぎゅっと締めつけられて、息を吸うのが苦しい。



(なんで、こんなに……胸が、痛いの……)



目を伏せたまま、言葉にできない想いが、ただ膨らんでいく。














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