【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
昼休み。
有紀は一人、ビルの屋上で風に当たりながら、スマホを握りしめていた。
(……ちゃんと返事、しなきゃ)
あの日の夜。
酔った勢いなんかじゃないって、ちゃんとわかってる。
言葉も、抱きしめる腕も、全部、本気だった。
その気持ちを受け止めたまま、曖昧にしてしまうのは──誠実じゃない。
でも。
(なんて送ればいいの……?)
何度も打っては消したメッセージ。
胸の奥にある「ありがとう」と「ごめん」が、うまく並んでくれなかった。
けど──いつまでも逃げていられない。
深呼吸をして、再びスマホを開く。
短いけれど、真っ直ぐな言葉を打ち込んで、震える指で「送信」を押した。
《佐伯有紀》 「この前のこと……ちゃんと話したいです。今日、少しだけ時間もらえませんか?」
(ちゃんと伝えよう。自分の気持ちを、ちゃんと)
メッセージを送った後、
ほんの少しだけ心が軽くなって、
でもその代わりに、ほんの少しだけ、胸の奥がきゅっと苦しくなった。
──それは、誰かを大切に想うってことの、証みたいな痛みだった。