【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
「……ありがとう。嬉しいよ」


ぽつりと返したあと、高峰は視線を落として、静かに続けた。


「俺さ……いつも、自分の気持ちに気づくのが遅いんだよな」


「本当はもっと早くに、ちゃんと気づいていればよかった」


「……逃げてたんだと思う。誰かを本気で好きになるのが、怖くてさ。
気づいたときにはもう、手の届かないところにいて、こぼれ落ちてた」



そう言う声は静かで、どこか自分を責めているようだった。


その思いの重さが痛いほど伝わってきて、有紀は言葉を返せなかった。



「……悔しいよ。応援なんか、できない」



ポツリとこぼれた本音。


ふっと笑ったけれど、その目は笑っていなかった。



「けど——佐伯には、幸せになってほしいって思ってる」


「———っ」



その一言が、真っすぐに響いた。




笑顔だった。


だけど、どこか泣きそうな笑顔だった。



有紀は胸の奥がじんと熱くなるのを感じながら、ゆっくりと頷く。



「ありがとう……高峰くん」



その言葉に込めたのは、かつての想いへの感謝と、そして、いまの想いへのけじめだった。


——誰かの想いを受け止めるには、優しさだけじゃなく、覚悟が要る。



ちゃんと向き合ってくれた彼の、その強さが。

 
たまらなく、愛おしかった。



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