【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
そして数日後。
ふたりが担当していたプロジェクトは無事にクライアントの了承を得て、後続のサポート業務は別チームに引き継がれることになった。
(やっと、この案件も、これでひと段落か……)
資料をまとめ終え、資料室を出ようとしたタイミングで声が飛んできた。
「佐伯」
顔を上げると、黒瀬がこっちを見ている。
「仕事、落ち着いたみたいだしさ。今日、飯でも行かね?」
「え……いきなりだね」
「頑張ってたみたいだし、何か奢ってやるよ。」
「えっ。ほんとに?」
「お前、ここ数日忙しすぎて、やつれてるから」
「ちょっと…!」
相変わらず、失礼なこと言うけれど、
本当にここ数日は仕事に全力投球でまともな食事をとってなかった気がする。
黒瀬は、いつもの軽い調子でそう言うけれど、目はふざけていなかった。
どこか様子を窺うような、少しだけ真剣な表情。
(そういえば、……あの会議室以来、二人きりでちゃんと話してない気がする)
高峰とのことを話す必要はない。
でも、何かが変わり始めているのは、きっと黒瀬も感じているはず。
「じゃあ……今日、お願いしようかな」
その返事に、黒瀬は口元だけで満足そうに笑った。
「了解。じゃ、定時で終わらせるぞ。」
「……はいはい、了解です」
どこか懐かしくて、どこか新しい。
そんな空気が、ふたりの間に流れはじめていた。
──もう、次へ進んでもいいよね。
そう、心の中でそっとつぶやきながら、有紀は画面に目を戻した。