【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜
有紀の部屋の前。
鍵を開けて中に入ると、背後でドアが静かに閉まる音がした。
振り返る間もなく、黒瀬の腕が有紀の腰を引き寄せ、後ろから抱きしめられる。
「…っ」
「……ずっと、こうしたかった」
「……く、黒瀬くん…」
「言ったろ。俺、我慢してたんだって」
耳元に感じる吐息。
背中に感じる温度。
低い声。
そのすべてが、有紀の欲を刺激する。
「有紀」
名前を呼ばれて振り向くと、
目を閉じるより先に、彼の熱が、有紀の唇に触れた。
ゆっくりと、でも深く。
抑えていたものを滲ませながら、黒瀬の唇が有紀の唇を確かめるように重なる。
──好き、とは言わない。
だけど、指先も、唇も、呼吸すらも、
全部が「好き」だと言っているみたいだった。
そうだったらいいなって思った。
部屋の灯りの中、ふたりの影が重なる。
名前のない関係が、またひとつ、夜の中で深まっていく。