【完結】恋はあの人に、堕ちたのは君に。〜今日も意地悪な同期の腕の中で〜

「全部、ちゃんと見たい」

「……ごめんね。ちょっと汗、流したくて……」


浴室に入ると、有紀が気まずそうに呟いた。


バスタオルをぎゅっと胸元に抱きしめながら、視線を逸らす。


「今から、またかくのに?」


黒瀬の茶化すような言葉に、思わず頬が熱くなる。



「……もぉ、言い方っ」



反射的に言い返しながらも、有紀はタオルをさらにきゅっと握りしめた。



浴室には、シャワーの音と、湯気をまとった静けさ。


ぼんやりと曇ったガラスの向こう、
そこにはいつもと少し違う、特別な空気が流れている。



ふとした瞬間、背中の方から気配を感じて、


振り返ると、黒瀬が少しだけ真面目な表情をして立っていた。



肩に触れられる。
それだけで、肌がじんと熱を帯びていく。


「……あんまり、見ないで」


ぽつんと落ちたその言葉に、黒瀬の口元がゆるむ。



「今さら?」

「い、今さらだけど……。やっぱり、明るいと……恥ずかしいから……」



小さく唇を噛む有紀に、黒瀬は一歩近づくと、


優しく肩を抱き寄せた。



「わかった。じゃあ、あんまり見ないで触るわ」


「ちょっ、またそういうこと…っ」



頬を赤らめてぷいと顔を背ける有紀に、黒瀬がくすっと笑う。



「……冗談。てか、有紀がかわいすぎんのが悪いんでしょ」



その声は、意地悪なのにどこか優しくて、

湯気越しの空間が、じんわりと甘く満たされていく。


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