エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「私は本来であれば、純司さんの隣に並び立つ権利のない人間でした」
「そんなことはない」
「両親もいませんし、貧乏で……店長さんが助けてくださらなかったら、子ども達と3人で生き続けていられたかすらも怪しいです」
「叔母には、何度感謝してもしたりない。生きていてくれて、本当にありがとう」

 私は小さく頷き、過去を振り返るのはもうやめようと決心する。
 大切なのは、過ぎ去った時間ではなく――これから訪れるであろう未来なのだから……。

「私は、これからも子ども達の母親として……。純司さんの妻として、自信を持って生きていきたい。そう、思うから。惨めな気持ちになるかもしれない過去は、聞きたくないです。ごめんなさい……」
「謝らないでくれ」

 こちらが悲しそうに目を伏せたのが、気がかりだったのだろう。
 彼は謝罪をする必要はないと語ったあと、私に告げる。

「君が泣いているところは、儚げで庇護欲を掻き立てられる。だが……笑っている時は、もっと好きだ」
「私も、純司さんが怒っている時よりも……。口元を綻ばせている時のほうが愛おしいと感じます」
「君といる時は、できるだけ笑顔を心がけよう」
「はい」

 微笑み合った直後、憂鬱な気持ちがどこかへ吹き飛んでいくのを感じる。
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