エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「助けられたかもしれない命が、自分の知らないところで儚く散る……。そんなことになったら、君のせいで僕は一生消えない傷を刻み込まれてしまうだろうな」
「あ、あの……」
「君と出会ったせいで、弁護士を続けられなくなる」

 最初は何を言っているのだろうかと、不思議で堪らなかった。
 しかし、こちらが冷静になるのを拒むように次々と責められたら、なんだかよくわからなくなってきて――。

「僕の人生を無茶苦茶にする覚悟が、君にあるのか?」
「あ、ありません……!」

 誘導尋問に屈したと気づいた時には、もう遅い。
 私は1枚も2枚も上手な弁護士さんに言質を取られ、逃げ道を塞がれてしまった。

「ひ、卑怯です……!」
「これも、立派な作戦のうちだよ」

 涙目で睨みつけられたところで、痛くも痒くもないのだろう。
 彼は優しく口元を綻ばせると、手首を掴んでいた指先を私の掌に移動する。
 そうして、離れないように指の間に絡めた。

「これからよろしく。僕の偽彼女さん」
「え、ええ……っ!?」

 どうしてそうなるんだと素っ頓狂な声を上げたところで、彼の気持ちは変わらない。
 こうして私は自分でもよくわからないまま、弁護士さんの偽彼女になってしまったのだった……。
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