エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
 ――怖いとか、恐ろしいとか。
 そんなよくない感情に支配されるよりも先に、弁護士さんの予想がつけられない行動で頭がいっぱいになっていたおかげだ。

 私は内心大門寺さんに感謝をしながら、彼の顔色を窺う。

 ――相談内容が作り話ではなく事実だと、受け入れてくれた確証がほしかったからだ。

「このまま、諦めてくれたらいいんだが……」

 弁護士さんは繋いだ指先に力を込めると、わざと遠目からでも仲のよさをアピールするように身体を密着させた。

「ひゃ……っ。ど、どうしたんですか……?」
「こうして身体を寄せ合えば、寒さなど吹き飛ばせるはずだ」

 私が突然のことに驚いて素っ頓狂な声を上げても、大門寺さんはまったく気にした様子がない。
 それどころか、優しい瞳でこちらをじっと見つめている。
 まるで彼女が大事で仕方がない、彼氏のように――。

 そんなふうに見つめられたら、勘違いしてしまう。
 偽彼女なんて関係ではなく、本当に彼の一番になりたい。
 そう欲張る自分がいることに驚きを隠せなかった。

 ――ちょっと優しくされただけで好きになる。
 そんなの、よくないよね。
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