エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
 変質者の身元を判明させて喜んだのもつかの間、その兄が姿を見せたせいでお金と時間を無駄にしてしまった。
 そう後悔している間に、弁護士さんは園山さんとの交渉を続け――。
 150万という大金が支払われることによって、余談は成立した。

 なけなしの貯金を放出しなくて済んだのはありがたいけれど、こうもあっさりと彼との別れが来るなど想像もしない。
 私は気持ちの整理がつけられないまま、大門寺さんに向かって頭を下げた。

「今まで本当に、ありがとうございました……」
「気にするな。これも、仕事の一環だ」

 弁護士さんは1年近く、業務外にタダ働きをしている。
 その言葉は明らかに嘘だとわかっていたが、それを正したところでそばにい続ける権利は得られない。

「偽彼女として一緒にいられるのも、今日で最後ですね」

 ――最後はせめて、後腐れなく別れを告げたい。
 そんな思いを込めて、笑顔を浮かべる。

「そうだな。問題が解決したい以上、偽彼氏を続ける必要はない」

 とてもじゃないが、彼と目を見て会話をするなんてできなかった。
 大門寺さんが、私のことをどう思っているか知ってしまったら――。
 このまま別れることすら、出来なくなる気がしたから……。
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