エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「今の会話は、忘れてくれ」
『そんなの、できるわけないじゃん! こっちは理不尽に怒られてるんだよ? 謝罪くらい――』

 会話を続けようと試みる元許嫁との通話を終え、僕はその場に蹲る。

 ――自らの手で彼女を守りたい。
 そう心の底から願ったから、僕は偽彼氏に立候補した。

 そのせいで澄花に逃げられるとわかっていたら、僕は想いを告げるという選択肢だけは選び取らなかっただろう。

「澄花……。一体、何があったんだ……?」

 どれほど虚空に問いかけたところで、面と向かって彼女の口から真実が語られぬ限りはその理由がわかるはずもない。

 こうして僕達は別れ話すらもする暇もないまま、道を違えてしまった。
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