エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
 親戚の集まりに叔母の近所に住んでいるという双子が顔を見せたのは、あの時の一度きりだ。
 当時、幼子達は3歳だった。
 涼花は今日が初対面だと思っているようだが、司はあの時の記憶があるのか。
 帰り際、意味深な発言をした。

「ほんとに、おじさん……?」

 しかし、澄花は子ども達と2度目ましてだと知らない。
 そのため、足早にこの場を立ち去ってしまった。

 ――呼び止めて抱きしめ、愛を囁くのは簡単にできる。
 それをせずに黙って見送ったのは、子ども達が傷つくのを恐れたからだった。

 双子にとって、澄花は大切な母親だ。
 そんな彼女に、突如密着する男性が現れたなら――。
「ママが取られちゃう」と泣き叫ばれるのは容易に想像できた。

 彼女が叔母の近くにいるとわかっただけでも、大収穫だ。
 僕はこれからどうやって己のいだく愛を伝えようかと思案しながら、澄花を絡め取る準備を始めた。
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