すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「悠里ちゃん、ちょっといい?」

 食器の片づけを済ませたところで、ソファーに座るように叔母に促される。光太は、セルジオが見てくれている。

「あっ、今日の仕事の報告?」

 一応、決められた終業時間は過ぎているから、話は明日聞かせてと言われていたはず。

「ううん。そうじゃなくて、悠里ちゃん。あなた、なにかった?」

 ギクリと肩を震わせる。

「えっと……」

 帰りがけに、柴崎さんと再会した話はいっさいしていない。
 隠す必要はないのかもしれないが、事実をどう受け止めればいいのか私自身がまだよくわかっていなくて黙っていた。

 叔母にじっと見つめられていると、すべてを見透かされそうな気がしてくる。だんだん居心地が悪くなってきて、すっと目を逸らした。

「悠里ちゃんが話したくないのならいいのよ。でも、今のあなたはどこか無理をしているように見えるの」

「言いたくないとか、そんなじゃないの。ただ、どうしていいのかなって……」

 視線を彷徨わせる。叔母は変わらず、穏やかな視線を私に向けていた。

「あの、ね」

 自分だけで答えが出せそうにないのなら、ここで聞いてもらった方がいいかもしれない。

「実は、帰って来るまでの間に、その……光太の父親に再会して」

「まあ」

 言葉を探しながら、たどたどしく話す。

「話がしたいから、連絡がほしいって言うの。だけど私、気が動転しちゃって。その場をやり過ごすために了承して、逃げてきちゃった」

「突然のことだったもの。そうなるのも仕方がないわよ」

 叔母が私の行動を認めてくれるからほっとする。
< 103 / 183 >

この作品をシェア

pagetop