すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「光太のことは気にしていたみたいだけど、なにも言われなかった。彼からはただ、渡したいものがあるって言われて」

 それがなになのか、見当もつかない。

「でも、横領の疑惑をかけられている私が彼に近づくのはよくないでしょ? それに私がイタリアへ来た頃に彼は婚約していたようだし、軽率な行動はできない」

「それなんだけど、悠里ちゃん。その方、本当に結婚したのかしら?」

「え?」

「悠里ちゃんからその話を聞いてね、ちょっと気をつけていたんだけど。ほら、私のかわいい姪を傷つけたやつは誰だって」

 茶目っ気たっぷりにそういう叔母だが、当時は本当に怒ってくれていたのだと思う。

「でも、今日までの間に続報は見かけなかったのよね。アメリカの有名女優となれば、海外にもニュースは飛び込んでくるじゃない? それなのに、噂ひとつ目にしていないのよね」

 ニュースの続報が報道されないことは、国内外の内容に関わらずよくある。日本にいた時だって、そういえばあの事件はどうなった?と、すっかり忘れ去られたものもたくさんあった。

「ねえ、悠里ちゃん。一度の顔を合わせて、話をしてみたらどうかしら?」

「でも……」

 光太のことを、彼に知られるわけにはいかない。
 勝手に子どもを産んでいたなんて、彼にとったらとんだ迷惑だろう。その感情を直接向けらたらと、想像しただけで苦しくなる。

 それに、私や父に横領の疑惑がかかっているなんて知られたくない。間違いなく潔白だと言い切れるが、それを証明するすべはなにもない。彼に信じてもらえるかはわからないし、疑いの目で見られたらと思うと怖い。
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