すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 翌日の夜になり、光太は叔母に預けて柴崎さんと約束したレストランへ向かった。
 場所は先日彼と出くわしたところから近く、普段着よりほんの少しオシャレをすれば入れるようなお店だ。おそらく、昨日の会話から私の家がこの近くにあると踏んで選んだのだろう。

 スタッフの案内で、個室に通される。
 彼はすでに到着しており、私が顔を見せると立ち上がって迎え入れてくれた。

 ちらっと彼の左手を確認したところ、指輪ははめられていなかった。とはいえ、単につけない主義かもしれない。ただ、この席なら他人の視線は届かないから問題はないだろう。

「連絡をくれて、ありがとう」

 席に着いた早々に、彼が言う。

「……いえ」

 ぎこちない空気の中、まずは食事をと促されてオーダーを済ませた。

「光太君は?」

 それから彼は、真っ先に息子について尋ねてきた。
 一瞬ギクリとしたが、なんとか平静を装う。

「今日は、叔母に預けてきました」

「悠里の子、なんだね?」

 光太についてはいろいろとごまかせただろうが、昨日からのやりとりを考えるとそれももう無理そうだ。

「……ええ。ご縁があって」

 その事実は認めるが、父親は彼だと告げるつもりはない。

 暗にほかの男性との子だと仄めかすと、彼はハッとして一瞬苦しそうな顔をした。
 けれどすぐに思案顔になる。

「一歳を過ぎたばかり、っていうところかな」

 光太を妊娠した時期を考えているのだろうか。そこは追及されたくなくて、彼のつぶやきに私はなにも返さない。
 そうこうしているうちに、料理が運ばれて来た。
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