すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「俺の話を聞いてくれないか?」

 私がうなずくと、一度瞼を閉じた柴崎さんはテーブルに視線を落としたまま静かに口を開いた。

「雄大さんが亡くなったと、俺が父から知らせを受けた頃には、すでに葬儀が済んで二カ月近くが経っていた」

 そういえば父はもともと彼のお父様と交流があったと聞くが、葬儀のときにその名があっただろうかと記憶が辿る。が、はっきりとは思い出せず、なかったような気がする程度の認識にとどまった。

 あのときの私はすっかり動揺して、それから糸が切れたようなぼんやりとした状態にあった。葬儀はすべて叔父に任せてしまったが、今にしてみれば父の立場に対して弔問客は多くなかったかもしれない。知らせる範囲について、叔父が私に確認を取ることもなかった。

 まさかと、叔父が疑わしく見えてくる。

 あの人は父を疎んでいたようだし、亡くなったことも広く知らせずに最低限で済ませてしまったのかもしれない。
 叔母だって、後になって人づてに聞いたくらいだ。私がしっかりしていなかったことに責任があるのはわかっているが、叔父とも面識のある彼女に伝えていなかったのは不自然だ。

「連絡をせずにいて、ごめんなさい」

 父と柴崎さんの関係は長く続いていたはず。叔父はそれを知らなかったのか、それとも彼に教える必要はないと判断したのか。どちらにしろ、あまりにも失礼だった。

「違う。そのことで、悠里を責めているわけじゃないんだ。おそらくその頃の悠里は、精神的に余裕もなかっただろう」

 それでも……と、首を横に振った。
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