すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「俺の振る舞いは、あまりにも無責任だった。すまない」

 事態を上手くのみ込めない。
 彼の謝罪になにも返せないまま、動揺して視線が泳ぐ。

「そ、そんなこと、言われても……」

「非は俺にあるのだし、今更だと悠里が思うのも無理はない」

 どちらが悪いとかじゃないとかぶりを振る。

 すっかりうろたえていたが、ふと彼にはすでにほかの相手がいることを思い出した。
 きっと、罪悪感から私を捜してくれていたのだろう。今夜こうして話ができたのだから、私とのことはこれで区切りをつければいい。

「悠里、光太君のことだが……」

 どうやって話を切り上げようかと思案していたところ、子どもの名前を出されて弾けるように顔を上げた。
 探るような彼の視線とぶつかり、思わず目を逸らせる。

「もしかしてあの子は――」

「わ、私の子です」

 あなたの子だと悟らせてはいけないと、反射的に彼を見つめ返して遮るように言う。

「……そうか」

 彼が納得していないのは、その表情からわかる。

 それから柴崎さんは私の左手に視線を走らせるから、隠すように右手を重ねた。

「結婚はしていないんだな?」

 とっさの反応は、指輪の有無を知られたくないと言っているようなものだったかもしれない。尋ねるような口調だったが、私が独身だと確信しているようにも聞こえた。

 なにも返せず、顔をうつむかせる。

「それならまた、悠里に会いに来てもいいか?」

 テーブルの下で、ぐっと手を握る。

「だって、あなたは……」

 婚約者か、もしくは奥様がいるでしょ?とは言えなかった。
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