すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「確かに、俺の言動は不誠実に見えたかもしれない。だが、あの頃も今も、悠里に対する気持ちに偽りはない」

 お相手とは、たしか仕事のつながりだったと記憶している。彼から望んだのではなかったとしても、あの女性は柴崎さんを心底愛しているようだった。
 それなのに、こんなふうに裏切るのはダメだ。

「やめてください!」

 昂った気持ちを抑えきれず、声が大きくなる。
 まだ真偽を確かめていないことも忘れて、戸惑う彼にかまわず続けた。

「そんなの、あまりにも不誠実じゃない。あなたのお相手を裏切るようなことをしないで。そこに私を巻き込まないで」

「俺の、相手?」

 聞き返してきた彼に、そうだとうなずく。

「なんのことだ?」

 眉を顰めた柴崎さんをじっと見つめる。

「悠里、なんの話をしているんだ?」

 困惑する彼の様子を見ていると、興奮が徐々納まっていく。

「だって……」

 泣き言のようになるのが嫌で、込み上げてきた感情をぐっとこらえる。

「アメリカに渡ってすぐ、あなたは取引先の親族の女性と結婚が決まったって」

 そこまで言うと、柴崎さんがハッとした顔した。

「あれからずいぶん経つし、結婚しているんじゃあ――」

「誤解だ」

 勢いよく、彼が腰を浮かせた。

「え?」

 真剣な顔で、柴崎さんが私を見つめる。

「たしかに、そんな話が持ち上がったのは否定しない。だが、その場で断りを入れている」

「だって、相手の女性はインタビューにまで答えていて……」

「全部話すから、聞いてほしい」

「う、うん」

 私が了承すると、彼は腰を落ち着けて話し始めた。
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