すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 キャッキャと嬉しそうな声を出す光太を見ていると、このふたりの関係を切り裂いてはいけない気持ちになる。

 ダイニングの一角に用意したスペースに、光太を降ろしてもらう。
 柴崎さんは今日も光太にプレゼントを用意してくれていた。小さな子向けのブロックで、カラフルな色合いに光太も興味津々だ。

「いつももらってばかりで、すみません」

「俺がしたくてやっていることだ。むしろ、迷惑じゃなかったか?」

「迷惑だなんて」

 玩具の与えすぎとかそれ以前に、気にかけてもらえて素直にうれしいと思う。

「それなら、よかった」

 先日と同じ椅子に座ってもらい、飲み物を用意する。それから、午前中に焼いておいてブラウニーを添えた。

「もしかして、悠里の手作り? ここへ来てから、甘い匂いがしていたんだけど」

「う、うん。口に合うかどうか……」

 生前の父は、料理もお菓子も私が作ったものを『美味しすぎる』『売り物のようだ』なんて過剰に褒めておだてた。
 そのときの感覚で今日も用意したが、お客様に出すなら買ってきたものにするべきだったかと不安になってくる。

 柴崎さんが食べる様子をうかがう。
 口に含んですぐに、彼の口角が上がった。

「美味しい」

「よかった」

 知らずに詰めていた息を吐き出す。

「悠里はお菓子作りが得意なんだな」

「得意ってほどでは」

 作るのは嫌いじゃないから、父にも野菜を取り入れたお菓子もよく作っていた。光太には蒸しパンを作ることが多いが、今後はキャロットケーキやカボチャのマフィンなんかにも挑戦したいと明かす。
< 132 / 183 >

この作品をシェア

pagetop