すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 なんだか落ち着かなくて、しゃべりすぎたかも知れないと彼を見る。すると柴崎さんは、優しい笑みを浮かべた。

「悠里の新たな一面を知れて、うれいいよ」

 些細なことで幸せそうな顔をする彼に、どうしようもなく胸が高鳴る。

「あ、あの、私」

「ん?」

「父と自分の疑いを晴らすために、日本に行こうと思って」

 なんだか気恥ずかしくなって、早々に本題を切りだした。
 柴崎さんが、すっと真剣な顔になる。

「光太にまで悪い影響がって考えたら、居てもたってもいられなくて。その、あなたとの関係はまだ結論が出せていないんだけど」

「それは、ゆっくりと考えてくれればいい。もちろん、俺を選んでもらえるように努力は惜しまないが。それよりまずは、ふたりにかけられた疑惑の件だ」

 チラッと光太へ視線を向けると、彼も私に倣って振り向いた。

「光太も、一緒に連れていきます」

 出産をしたのがイタリアだったため、光太は一度も日本へ行ったことがない。あの子にとって祖父母にあたる、私の両親のお墓参りに一度は連れていきたいと思っていた。

「当然だよ。ふたりとも、俺のマンションに連れていくから」

「さ、さすがにそれは……」

 日本での滞在期間が、どれくらいになるかはわからない。懐事情は厳しいけれど、部屋を借りるつもりでいた。

「悠里が大変なときに、一緒にいてやれなかったんだ。これくらいはさせてほしい」

「でも……」

「まんま」

 光太が私を呼ぶ声に、再び顔を向ける。
 拙い歩きでこちらへ来ようとする光太に気づいて、腕を広げて待った。
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