すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 翌日も拓真さんからのメッセージやプレゼントが届き、それを知った叔母がいつものように目を輝かせる。
 話は早い方がいいと、セルジオもいるタイミングで拓真さんの気持ちに応えたいと伝えた。

「よかったじゃない、悠里ちゃん」

 目を潤ませた叔母が、セルジオに抱かれた光太を見る。

『光太には、父親が必要だよ』

 セルジオが光太の頭を優しくなでる。

「そうそう。あなたに、お義兄さんがいたようにね」

 ひとりで育てていくと、光太が生まれる前から心に誓っていたのは嘘じゃない。
 けれど拓真さんの優しさや頼もしさに再び触れたら、途端にひとりが心細くなった。

「それは、私もそう思う。ただ、ふたりにはこんなにお世話になったのに……」

「悠里、違うよ」

 珍しく、セルジオが私の言葉を遮った。大切な話をするときの彼は、間違いのないように日本語を使う。

「恩返しは僕たちの役に立つことじゃない。悠里と光太が、幸せな笑顔を見せてくれることだ」

 彼の隣で、叔母もうなずく。

「もちろん、たまには家族そろってイタリアへ遊びに来ること。これは外せない条件だ」

 セルジオが茶目っ気たっぷりに言う。

「僕たちも、なんだかんだ理由をつけて日本へ会いに行く。美奈子も、故郷にはもっと帰るべきだよ」

 セルジオに口づけられた叔母は、「そうね」と笑みを浮かべた。

「ありがとう……ふたりとも、本当にありがとう」

 滲んだ涙が、頭を下げた同時にぽたりと落ちる。そんな私を、ふたりを温かく見守ってくれた。

 翌日の夜に、都合がついたからだと拓真さんが叔母とセルジオに挨拶に来てくれた。
 彼は自分のせいで私とすれ違ってしまい、一番大変なときにひとりにしてしまいもうしわけなかったと、親代わりのふたりに頭を下げた。

 それに対して叔母は、「大事なのはこれからよ」と言い渡す。セルジオに至っては「最愛の女性に愛の言葉を惜しんではいけない」なんてアドバイスるをするから、聞いているこちらが気恥ずかしかった。

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