すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「ありがとう、拓真さん」

「ああ。――光太。これから飛行機に乗るぞ。ほら、プレゼントだ」

 拓真さんが取りだしたのは、小ぶりの飛行機のぬいぐるみだった。

「ん、ん」

「どういたしまして」

 お礼を言っているのだと、拓真さんが察する。

「それじゃあ、悠里。俺は行くけど、光太と空の旅を楽しんで」

 光太を受け取り、去っていく彼の背中を見送る。
 父との約束を忘れないでいてくれたことがうれしい。

「光太のパパは、飛行機の運転手さんなんだよ」

 柔らかな光太の髪に頬ずりする。
 それから、叔母たちの方へ向き直った。

「それじゃあ、行ってくるね」

 叔母とセルジオに、別れを告げる。

「後のことは、なにも心配いらないから。そのまま、日本で彼と一緒に暮らしてもいいのよ」

「そうそう。愛するひととは、一緒にいるべきだ」

 そう言いながら、セルジオが叔母の腰を抱き寄せてキスを贈る。

「ありがとう」

 光太の手を持ち上げ、ふたりに手を振る。状況をわかっていない彼は、されるがままにこにことしていた。

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