すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 それから雄大さんは悠里を抱き上げて、ふたりで見送りに出てきてくれた。

「雄大さん。僕、父さんの会社を継ぐまでは、パイロットになりたいと思っているんです」

 別れ際に、特に話すつもりのなかったことを自然と彼に打ち明けていた。

 隣にいる父は、聞いていないふりをしてくれているようだ。

 彼に抱かれた悠里は眠くなったのか、目をこすっている。しっかり者の姿はすっかりなりを潜め、雄大さんにべったりくっつく姿がかわいらしい。

「いいじゃないか。おじさんはな、飛行機が大好きなんだ。いつかうちに遊びに来るといい。レアな模型がたくさんあるぞ」

 それは楽しそうだと、うなずき返す。

「うちが関わっているあの機体を、いつか拓真君に操縦してほしいな。これはおじさんの新しい夢だ。もちろん、そのときはおじさんを乗せてくれよ。それまでなんとしても、この会社を守っていくから」

 川島金属機器が、何度か経営難に陥りかけたことは知っている。そのたびに雄大さんは奮闘し、ここまで会社を守ってきたのだと、事前に父が語っていた。

「はい、約束します」

 その後、彼との約束を忘れたことは一度もない。あれ以来、顔を合わせてはいなかったが、雄大さんの言葉はいつまでも心に残っていた。

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