すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 自分が想像した以上に、悠里はまいっているのかもしれない。悠里のことが心配でたまらず慌てて連絡を入れたが、つながらないどころかスマホは解約されているようだった。

 嫌な不安が広がる。けれど仕事を放りだすわけにもいかず、届かないメッセージを悠里に送り続けた。

 訃報の知らせを受けてしばらくした頃、ようやく作れた時間を使って一時帰国をした。

 空港から真っ先に彼女の自宅に向かったが、なんの応答もない。ちょうど出くわした近所の住人に声をかけると、雄大さんが亡くなった直後から悠里を見かけないという。

 手掛かりはなにもなく、次に川島金属機器へと向かう。
 俺を出迎えたのは、新しく社長に就任したという川島哲二という男だった。雄大さんの弟で、これまでは副社長を務めていた人物だ。

「悠里なら、退職をした。本当に不義理な娘だよ」

 不快感を隠さない態度に、思わず眉を顰める。自分の叔父のような横暴さが見え隠れして、あの大らかな雄大さんとは似ても似つかない。

「こっちも迷惑をしているんだよ」

「悠里は今どこに?」

「知らないな」

 取り付く島もない。追い出されるように川島電気機器を後にした。

「悠里はいったい、どこに行ったんだ……」

 悠里に関してなにもつかめないまま、再びアメリカに戻ることになってしまう。

 それからも、機会を見つけては帰国して悠里を捜した。
 自分の力ではどうにもならず、早々に専門業者に調査を依頼している。

 結果、雄大さんと悠里に横領の疑惑をかけられていることが判明した。
 雄大さんに代わって社長を務めている川島哲二の横柄な態度はともかく、訪問した際は彼が急いているような不自然さを感じた。なにかあるのかもしれないと、川島哲二に関して追加調査を依頼した。
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