すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 悠里の一大事にそばにいてやれなかったことが、悔やまれてならない。

 不甲斐ない俺に、彼女は愛想を尽かしたのだろうか。無責任に彼女を抱いて、直後に音信不通も同然でアメリカに渡った。最低な男だと、見限られても仕方がないのかもしれない。

 アメリカでの交渉の成功とは裏腹に気落ちしていたが、それすら身勝手だったと知ったのは、仕事で滞在していたイタリアで、子どもを連れた悠里に再会した時だった。

 見た目の月齢から、おおよその妊娠時期はわかる。俺の子かもしれないと、初対面から悟っていた。

 不誠実な俺に、悠里が頑なになるのも当然だ。それでも再び出会えた彼女をあきらめるなどできるわけがなく、誠意の限りを尽くした。

* * *

「柴崎さんが、ついに結婚かあ」

 谷川のぼやきに我に返る。

「ついにって、なんだよ」

「女性陣の間では、あの堅物を堕とすのは誰だってやきもきしていたんですよ。なんなら自分が!って人も多くいるし。まあ、柴崎さんの立場ならどこかのご令嬢だとかって線も噂されてたんですが」

「なんだよ、それ」

 谷川の認識では、いかにも俺が女性たちを振り回しているように聞こえる。

 本当はまったく逆で、俺はいつだって悠里の言動に一喜一憂しているというのに。

 ここからは、俺が悠里と光太を守っていく。
 ふたりが安心して暮らすにはどうしたらいいのか。その算段をつけながら谷川のぼやきに適当に相槌を打っていた。


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