すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました

未来はあなたと

 光太を連れての長旅はどうなることかと不安があったが、意外にも終始ご機嫌に過ごしてくれて助かった。
 離陸時の騒音には目を真ん丸にして驚いていたものの、泣きはしなかった。それから窓の外を興味津々に見つめ、ご機嫌な声をあげる。その小さな手には、拓真さんがくれた飛行機のぬいぐるみを終始握っていた。

 光太の愛嬌たっぷりな姿に、周囲も好意的に見てくれているのが伝わる。通りかかったCAやほかの乗客が声をかけてくれることもあり、泣いたらどうしようという不安は薄らいでいった。

 無事に羽田空港に到着して、キッズスペースで拓真さんを待つ。

「悠里、光太」

 しばらくして、仕事を終えた拓真さんがやってきた。
 光太も彼の顔は覚えたようで、呼ばれるとたどたどしい歩きで近づいてくる。

「ノンン!」

「光太、パパだよ」

 靴を履かせながら、機内でいかに光太がお利口に過ごしていたかを伝える。すると拓真さんは、身支度が整った光太を高く抱き上げた。

「そうか、光太。えらかったな」

 片腕に抱き直し、大きな手で光太の頭をなでてやる。光太はくすぐったそうに笑った。

 外に出ると、むわっとした暑さに襲われる。もう夕方遅くのため、辺りは薄っすらと暗くなっていた。

 タクシーに乗り込むとすぐに、光太が眠そうな顔をする。機内では、興奮して睡眠が細切れになりがちだったからだろう。

 運転手に拓真さんが告げた住所は、ここからそれほど離れていない。私の記憶が正しければ、かなり高級なマンションが立ち並ぶエリアのはず。

「通勤の利便性もだが、セキュリティー面も考慮してね」

 到着した高層マンションに圧倒する私に、拓真さんが説明する。彼ほどの立場にあれば、とくに安全面は考慮する必要があるのだろう。

 エレベータで二十六階まで上がる。車内で眠ってしまった光太は、拓真さんが抱いてくれている。
 彼に続いてリビングに入り、光太を受け取る。促されてそわふぁーに座っていると、拓真さんが即席で光太を寝かせるスペースを作ってくれた。
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