すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 あらためて、室内を見回す。このリビングだけで、イタリアで光太と暮らす二部屋のアパートよりも広い。全面ガラス張りになっており、広く外の景色を見渡せた。

 すっかり夜景に見入っていたうちに、拓真さんが隣に立つ。腕が触れ合うその距離感に胸を高鳴らせつつ、長身の彼を見上げた。

「疲れているだろうから、食事はデリバリーを頼もう。体調次第で、明日はふたりに必要なものを買いに出ようか」

 荷物は必要最低限しか持っていないから、その提案はありがたくてうなずく。

「それから、雄大さんと悠里のお母さんのお墓参りにも行きたい」

 父の葬儀の後、それほど経たないうちにイタリアに渡ってしまい、それから一度も帰国していない。いつかきちんとお参りをしたいと思いながら、当分は無理なのだろうとあきらめていた。

「光太のことも、ちゃんと報告したいなあ」

 父を亡くした悲しみや彼とすれ違ってしまった後悔など、様々な感情が急に押し寄せてくる。涙で視界が滲む私の心情を察してくれたのだろう。拓真さんがそっと抱きしめてくれた。

「俺は、雄大さんに叱られるんだろうな」

 私の髪に顔を埋めながら、拓真さんが言う。

「そんなこと……」

 私たちのすれ違いはどちらかが悪いとかではないと、首を横に振る。

「それに、嫉妬もされそうだ」

 どうして?と彼の腕の中から見上げる。目が合った拓真さんは、私に微笑みかけてきた。

「ほら。娘さんをくださいって、挨拶するから」

 わずかな後に意味を理解して、気恥ずかしさに彼の胸もとに額を押しつけた。
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