すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「今後は抗がん剤治療になっていくんですけど、父は回復に時間がかかっているようで。もうしばらく入院をして、それ以降は通院になる予定です」

「……そうか」

「その、柴崎さんと父との関係をお聞きしても?」

「ああ。病院でも話したように、雄大さんは俺のもうひとりの父親のような存在なんだ」

 父が息子同然の年代の彼とそんな付き合いをしているなんて、まったく知らなかった。

「いずれ航空会社のトップに立つのなら、関連する会社の現場を知っておくべきだというのが父の方針だった。そこで子どもの頃に、空港内の関連施設から川島金属機器のような町工場までたくさんの現場を見せてもらっていたんだ」

 父と出会った当時を思い出しているのか、彼がくすっと笑う。

「雄大さんは、ずいぶんな飛行好きで」

「父のあれは、好きなんてレベルじゃないです。自宅には飛行機のプラモデルいくつもありますし、毎月届く月刊誌はもう何年分も本棚に並んでいるんですよ」

 父の飛行機好きはもうマニアの域に達していると漏らすと、柴崎さんはさもありなんといった様子でうなずいた。

 運ばれてきた食事に手をつけながら、彼の話に耳を傾ける。

「初めて会った時は、俺がまだ小学生の頃だった。訪問先によっては子どものお遊びかと見られることもあった中で、雄大さんは俺を対等な人間として接してくれた」

 目を細めた柴崎さんの優しげな表情に、ドキリと鼓動が跳ねる。

「自分が苦労してきた話や、家族のこと。それから、いかに飛行機が好きか。雄大さんは子どもの俺にもわかるように噛み砕いて、ごまかすことなく話を聞かせてくれたよ。お互いに飛行機好きなのもあって、歳の差なんて関係なくすっかり意気投合した」

 航空機関連のグッズを集めている話も本人からさんざん聞いていると、柴崎さんが苦笑する。
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