すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「きっと、雄大さんも光太を見て喜んでいる」

「うん。……その、会社の話だけど」

 重い話題に、口調が暗くなる。

「そうだね。ここまででわかっていることを話すよ」

 私の行方を探ると同時に、拓真さんは横領についても調べを進めていた。

「川島哲二だが、どうやら昔から社長の座を狙っていたらしい」

「私もこんなことになるまで、叔父の思惑にまったく気づかなかった」

 父ほど愛想のいい人ではなく、従業員とも軽口を飛ばし合う仲ではない。でも、父が生きている間に彼から敵意を感じてはいなかったはず。

「上手いこと、隠していたのだろう。その裏で、社長の座を虎視眈々と狙っていたようだ」

 あれほど心配する素振りを見せていたが、本音は父の死を待ち望んでいたのだろう。

「ここ数年の彼の暮らしぶりは、かなり派手になっているんだ。車の買い替えに海外旅行三昧。それに、子どもふたりを同時に私立大学の通わせている。祖父母からの援助や奨学金なんかを受けているにしても、どう考えても現状に見合わない贅沢をしている」

「それって……」

 つまり、叔父が会社のお金を使い込んだ疑いがあると、拓真さんも感じ取っている。

「悠里と前後して入社している事務の人間も、気になるところだ。時期的に、まるで悠里を追いだすことを見越して雇ったようにしか見えない」

 自分もそんな雰囲気を感じていた。

「とにかく、現段階では状況証拠しかいない。内部の人間に話を聞ければいいが、あの男が社長に就任して以来、社内の雰囲気は一変したようだ。俺が悠里の件で訪ねたときも、端から門前払いも同然で知らないの一点張りだった」

 訪問客に対して、あまりに失礼な態度だ。

 一緒に働いていた従業員たちの顔が浮かぶ。彼らは今、どんな気持ちでいるのだろうか。
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