すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「川島哲二が社長に就任して以来、川島金属機器の業績は徐々に悪化している」

「そんな……」

 父が守ってきた会社を、ここで潰させたくはない。

 以前の私は、叔父に追及されて早々に逃げ出してしまった。でも残っている従業員や亡くなった父のためにも、そして自分と光太のためにも、もう投げ出すつもりはない。

「内部とのつながりができれば……」

 悔しげに拓真さんがつぶやく。
 彼もあの手この手を尽くして探ってくれていたらしい。けれど今の川島金属機器は、叔父からの圧力が大きいようで、なかなか内情が漏れて来ないのだという。

 社内は、恐怖や脅しで支配するような状態になっているのかもしれない。父が残したものは、それほど経たないうちに壊れてしまったのだろうか。そう思うと、胸が苦しくなる。

「まんま……」

 どんよりとした空気が漂い始めた中、目が覚めた光太がむにゃむにゃとした声を上げた。
 私が動くより先に、拓真さんが立ち上がる。そうして腕を伸ばしていた光太を抱き上げた。

「光太。ほら、ママもここにいるからな」

「光太」

 寝起きの不機嫌さで、光太が顔をゆがめる。泣きださないように私も声をかけた。

「ほら、こっちに来る?」

 ソファーに隣り合って座る。横から腕を伸ばすと、光太も同じようにしてきた。
 私の脚の上に座り、胸もとに顔を押しつけてくる。ずいぶん大きくなったけれど、こんなふうに甘える様子に笑みがこぼれる。

 この子にまで、大人の悪影響を及ぼしてはいけない。そう考えたところで、ふと思い出したことがあった。
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