すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 帰国して二週間ほどが経った。

 今日はこれから、いよいよ叔父のもとへ向かう予定でいる。
 これまでの間、拓真さんは仕事をこなしながら父と私の疑惑を晴らそうと動いてくれていた。

 もちろん私も協力をしていたが、彼からは『それよりも、急に違う環境に連れて来られた光太のケアに努めてほしい』と言われている。
 光太を最優先するのは当然だけど、自分だけゆっくりしているのは落ち着かない。せめてもと、家事を引き受けるようになった。

 日中は光太が退屈しないように外へ連れ出し、何度か拓真さんのお義母様にも会いに行った。帰国後、早い段階で彼からご両親に紹介されており、私たちの関係は快く受け入れてもらっている。お義父様と父が良好な関係だったのも大きいのだろう。お義父様からは、私が一番苦しんでいるときに力になれなかったことを謝られてしまった。

 父のありきの関係。
 拓真さんと知り合った頃は、その事実が苦しくてたまらなかった。

 でも今は父がいたからこそ築けた仲だと、私の中で捉え方が大きく変わっている。

「光太を、よろしくお願いします」

 川島電気機器へ行く前に立ち寄ったのは、拓真さんの実家だ。
 叔父との話し合いに幼い光太を同伴させるわけにもいかず迷っていたところ、彼のお義母様が預かろうかと申し出てくれたのだ。

 顔を合わせたのはまだ数回だが、人懐っこい光太は会えばお義母様の頬にも口づけるくらいに打ち解けている。私が不在だとぐずる可能性もあったが、ここはお義母様に甘えることにする。

「光太。少しの間、ここで待っていてね」

 お義母様に抱かれた光太を覗き込むと、きょとんとした顔をされる。

「ほら、光太。これで楽しく留守番できるかな」

 隣に立つ拓真さんが、今日のために用意していた玩具を取り出す。ボタンを押すとおしゃべりをするもので、彼が目の前でやってみせると光太は瞳を輝かせた。

「なにかあったら、連絡をください」

 光太が玩具につられている間に、拓真さんとそっと実家を後にした。
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