すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 入口の呼び鈴を鳴らすと、私と入れ替わるようにして雇われた宮野さんが出てきた。

 拓真さんの存在に気づいた彼女は一瞬驚いた顔をしたが、それからわずかに頬を染めて上目遣いで彼を見つめる。

「早く案内してくれないか」

 彼女からあからさまに媚びた視線に、拓真さんは不快感を隠さない。
 ハッとした宮野さんは、それから私を鋭く一瞥した。

 応接室へ入ると、叔父はすでに待ち構えていた。私を見てわざとらしい笑みを浮かべたが、拓真さんの存在に気づいて不快げに顔をゆがませた。

「同伴者がいるとは、聞いていないが?」

 じろりと叔父に睨まれて、ビクッと肩が跳ねる。大丈夫だというように、拓真さんが背に手を添えてくれた。

「以前の訪問で、ずいぶん迷惑そうな対応されたもので。私の名前を出せば、あなたは話も聞いてくれないだろうかと」

「君と話すことなど、なにもないと思うが?」

 席に着く前から始まった険悪なやりとりに、背中を嫌な汗が伝った。

「失礼します」

 お盆を手にした宮野さんが、応接室に入ってくる。会話を中断し、ひとまず叔父と向かい合わせに座った。

「まあいい。ところで悠里ちゃん。君にいい話があるんだ」

 叔父の発言を、言葉通りに受け取れるわけがない。眉を潜めそうになるのをなんとか我慢した。
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