すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「ええ、間違いありません。彼と私は、近いうちに結婚をする予定です。もちろん、彼のご両親も了承していますから」

「こんなどこの馬の骨ともわからん男だぞ?」

 以前、私と彼に交流があることは把握していたようだが、詳細は知らなかったようだ。

「拓真さんはOAJの次期社長ですよ」

 うちと拓真さんの会社に、直接的な上下関係があるわけではない。それでも見かけの年齢だけで相手を判断する叔父の浅はかさ指摘するために、彼の立場を明かした。

「会っていただきたい人がいるので」

 うろたえる叔父にかまわず、拓真さんが告げる。それから彼がスマホで連絡を入れると、しばらくしてふたりの男性が入室して来た。

「小林……」

 一緒に入室したのは、今回の件で依頼をしている弁護士だ。知らない人間の登場に、叔父が眉をひそめた。

「業績の悪化は、あなたによる会社の資金の横領が大きな原因。違いますか?」

 拓真さんがストレートに叔父に言い放つ。

「な、なにを、馬鹿な。横領は悠里とその父親の仕業だ」

「私も父も、そんなことは絶対にしていません」

 強い口調の叔父には、もう惑わされない。

「こ、こっちには証拠だって……」

「父親を亡くして動揺する悠里を丸め込んだ証拠を、今ここで見せてもらいましょうか」

 言いよどむ叔父を、拓真さんが追い詰める。

「川島さん」

 そのやりとりをしばらく見ていた小林さんが、静かに口を開いた。

「罪を認めてください。あなたはご存じでしょう。僕がすべてを知っていると」

「な、なにを言ってるんだ」

「前社長が亡くなる数年前から、あなたは会社のお金を横領して、私的に流用していた。それに気づいた僕に、黙っているように口止め料を何度も渡そうとしてきたじゃないですか。覚えがないとは言わせませんよ」

 従わなければお前も共犯者だと明かす。小林さんは、そうずっと脅されていたという。
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